彼女の出生は、シャドウの中でも魔導機文明に歴史の影で発達した一族にあった。魔法に向かないと言われるシャドウでも、道具を介することである程度扱えるようになった。特にガンは、シャドウの在り方、すなわち暗殺稼業によく噛み合ったと言われ、それは彼女の代にまで継承されてきた。あまりにも噛み合ったために、彼女の故郷の魔術師たちはシャドウたちを恐れた。この先は記すまでもないだろう。

　彼女が魔術師たちによるシャドウ狩りを生き延びることができたのは、数奇なことに、何処にも属さないさすらいの魔術師の正義感があってのことだった。その魔術師は若い男性の冒険者であった。彼は彼女を含むシャドウたちに出会うと、肩を震わせ、その場を去り、むしろ現地の魔術師たちと争った。
　本来、彼は『盗賊の討伐』という名目で発行された「依頼」を受注して、現地つまり彼女の故郷へ訪れたのだった。しかし、いざ標的とされていた者たちと遭遇し、依頼の真相が発覚すると、彼は己の正義のために戦った。彼は去り際に、怒りに満ちた声でこう語った。「同じ魔術師として恥ずかしいことだ。気付けずに、すまなかった」と。

　冒険者に救われた一団を除いて、故郷のシャドウは全滅した。その冒険者も、件の争いで戦死したという。彼女は魔術師たちを恨んだが、恩人もまた魔術師であったために、善悪は身分によらないことは分かっていた。彼女が撃ち果たすのは、邪悪な魔術師だけだ。あの冒険者に救われた命だ。彼のように、悪しき手から人を守れる者になるのだ。

　悪しき魔術師を撃つ。そのためにも力を得なければならない。