「そのままの意味だ。捨てられたのか、別の理由があったのかはわからないが、な。」
「だから、つい最近まで名前がなかった。でも、登録のときに要るだろう。名前。」
「だから咄嗟につけた。……"魔神"はやめた方がいいって、マスターに止められたから"魔人"になってる」
「セイバーは剣士って意味らしい、と聞いたから、魔人セイバーと。でも、好きに呼んでくれていい」
「魔人さんでもセイちゃんでもいいぞ」
「ああ、でも少し前に、煉獄という、顔がよく似た男が現れてな。なんと弟だと言うんだ」
「本当かどうかはさておき、一緒にいて悪い気分にはならない」

「森で自給自足をしながら、独りで生きていた。だから、色々狩った。多分、魔物も」
「ある日、倒した獲物の背中に、大きな剣が突き刺さってるのを見つけたんだ」
「そして、握ってみたところ、そこから変なのが飛び出してきた。……その変なのは私に、魔神使い、なるものの適性がある、と言っていた」
「獣同然の生き方をしていた私に色々教えてくれたのはそれだ。だから、恥ずかしくない程度に、読み書きはできる」
「……何。字が汚い。……それは、申し訳ない」

「好きなもの。……おでん。」
「この世に、焼いた肉や熟れた木の実よりも美味しいものがあるとは、思わなかった」
「煉獄が作ってくれた初めての料理がそれだった。聞けば、街でも売っているらしい」
「でも、冬にしか売っていないらしい。夏は暑くて、人気がない、と」
「私では作れないが、煉獄にあまり苦労させるわけにはいかないし、使っているものにも、お金がかかるらしい……悲しみ」
「お金。概念は聞いた。全部自分で狩ったり育てたりするより、それぞれに集中して、余ったものを交換するのがいい。直接交換だと色々と問題があるから、間に挟むのがお金だと」
「お金を稼ぐために、煉獄に冒険者を勧められた。ここに来たのは、そういうわけだ」
「お前もどうだ？おでん。美味しいぞ」