ギルドシティ・ウェンリッド

ラルヴァとヴァンパイアについて - ギルドシティ・ウェンリッド

ラルヴァとヴァンパイアについて

基本取引価格:非売品
知名度
72
形状
血の付いた色褪せた本
カテゴリ
PL用ツール
製作時期
不明
概要
ラルヴァとヴァンパイアについて纏めた本
効果
ラルヴァのPC / BB

ノスフェラトゥ(ヴァンパイア)と人族の女性とが、肉体的な交わりを持ったことで生まれるのが、ラルヴァです。
ラルヴァは主に人族の女性から生まれるため、蛮族社会で出会うことはまれです。
外見も、母体となった人族の姿そのままですが、肌は青白く、暗闇の中では目が赤く光ります。
日光に弱く、太陽下では動きが鈍る点は父譲りと言えるでしょう。
また、吸血せずとも死にはしませんが、本能に刻まれた吸血の衝動は強く、生涯これに抗い続けなければなりません。
こうしたことから正体が露見し、人族社会を追い出され、蛮族の中で生きる者も存在しています。
ラルヴァは15歳で成人し、老いません。
300歳ぐらいで一度死に、その後、死体は死蝋化して、約1年後に低い確率でノスフェラトゥとして覚醒し、蘇ります。
ですが多くの場合、覚醒はできず、レブナント化してしまいます。
なお、ノスフェラトゥの生き血にはラルヴァの覚醒を抑制する効果があり、これを摂取することで死蝋化せず、寿命を全うできると考えられています。

初期習得言語:「地方語」と「交易共通語」の会話と読文
選択不可の技能:なし
“穢れ”:2点

種族特徴 / BB

[暗視]

暗闇でも昼間と同じように物が見えます。

[吸血の祝福]

格闘武器〈牙〉を得ます。
さらに〈牙〉の攻撃が命中した場合、吸血を行えます。
吸血する場合、適用ダメージと同じだけHPが回復します。
HPを回復させる効果は1日1回のみです。
植物、アンデッド、魔法生物、魔動機からは、吸血できません。
〈牙〉Bランク

名称ランク用法必筋命中威力C値追加D
[刃]B2H#1-11-

[忌むべき血]

自らの血液をあらかじめ武器に塗っておくことで、自らの与える物理ダメージを上昇させることができます。
戦闘時、血液を塗った拳や武器で“穢れ”を持つキャラクターに物理ダメージを与えた場合、そのたびに血液を暴走させ、自らのHPを2点減少させて物理ダメージを2点上昇させることを選択できます(しなくてもかまいません)。
武器に血液を塗るのは補助動作で行うことができ、塗った血液の効果は1日(24時間)持続します。
飛び道具の場合、血液は矢弾に塗る必要があります。

[弱体化]

太陽の下にいる限り、命中力・回避力判定に-2のペナルティ修正を受けます。

ウェンリッドではこの種族特徴はありません。

ラルヴァの種族特徴の強化 / BB

6レベル

[忌むべき血]が強化され、HPを追加で1点(合計3点)消費することで、与える物理ダメージを+1点(合計3点)できます。

11レベル

[忌むべき血]が強化され、HPを追加で3点(合計5点)消費することで、与える物理ダメージを+3点(合計5点)できます。

弱点(戦闘時、弱点隠蔽判定失敗で適用) / BB

物理ダメージ+2点

ラルヴァの生まれ / BB
種族生まれ初期所有技能
ラルヴァ軍師ウォーリーダー11713BB 90p
ラルヴァ軍師ウォーリーダー111010IB 21p
ラルヴァ拳闘士グラップラー11911BB 81p
ラルヴァ射手シューター1489BB 90p
ラルヴァ射手シューター13612IB 21p
ラルヴァ魔法使いソーサラー or コンジャラー10615BB 81p
ラルヴァ魔神使いデーモンルーラー10714BB 90p
ラルヴァ魔神使いデーモンルーラー12712IB 21p
ラルヴァ戦士ファイター13810BB 81p、BB 90p
ラルヴァ傭兵ファイター1399IB 21p
ラルヴァ軽戦士フェンサー14710BB 81p
ラルヴァ神官プリースト10813IB 21p、BB 81p
ラルヴァ占い師ミスティック11614BB 90p

キャラクター解説 / CG

ノスフェラトゥが戯れで子をなした場合、生まれる種族はラルヴァと呼ばれます。
人族の女性が産むことが多いため、人族社会の中で育てられる傾向にあります。
種族特徴[吸血の祝福][忌むべき血]はともに非常に強力です。
双方を使えば、同じレベルのキャラクターの中でも抜きん出た活躍ができます。
ただし、太陽の光の下では[弱体化]の効果を受けてしまいますので、注意してください。

キャラクター解説 / BB

ノスフェラトゥと人族の間に生まれた子供が、ラルヴァです。
極めて珍しいヴァンパイアの幼体ともいうべき存在です。
優秀な能力値を有し、戦士にも魔法使いにも向いた適性や、特殊な能力を複数持っています。
ですが、太陽の光に弱く、生命力に劣るため、激しい戦いを生き残るのには相応のリスクを背負わなければなりません。

ラルヴァ(蛮族) / IB

蛮族でありながら、人族の領域に生まれるという、特殊な存在がラルヴァです。
ラルヴァは、ヴァンパイアが人族と肉体的に交わり、生まれてきた存在です。
不死者(ノスフェラトゥ)と呼ばれるヴァンパイアたちは、“血の接吻”と呼ばれる儀式によって優れた人族を自分たちの一族に引き入れますが、普通の人族や蛮族のように、肉体の交わりで子を成すことは獣同然の下品な行為と蔑んでいます。
にもかかわらず、人族の魅力に負けたのか、失った愛情が蘇ったのか、ごく稀に自然な形で人族との間に子を成すヴァンパイアがおり、ラルヴァが生まれてくるのです。
そのため、ヴァンパイアたちは彼らのことを、“虫けら”――ラルヴァと呼ぶようになったと言われています。
ほとんどの場合、ラルヴァは人族の女性と、ヴァンパイアの男性との間にできます。
そのため、人族の領域で生まれ育つのが普通です。
外見的には母親となった人族の姿と大差はなく、肌が病的に白いとか、夜になると眼が赤く光ってみえるなど、ささやかな特徴しかありません。
能力的にも、ヴァンパイアの要素はそうたくさんは受け継ぎません。
確かに日光には弱いですが、ダメージを受けるほどではありませんし、血を吸わなくても生きていけます。
しかし吸血の衝動は強く、自制し続けなければなりません。
武器の扱いも魔法の才能も優れており、仲間となればこれほど頼もしい存在はそうはいません。
なお、約300年生きたラルヴァは一旦寿命を迎え、息を引き取ります。
しかしその後、運がよいラルヴァはヴァンパイアとして目覚め、以前とは打って変わって蛮族らしい性格になってしまいます。
このことから、ラルヴァのことを“ヴァンパイアの幼体”と呼ぶ者もいます。
ですが、ヴァンパイアの生き血を飲めば、こうした転生は起こらず、天寿を全うできると伝えられています。
そのため、ラルヴァの多くが人族の一員として死ぬべく、ヴァンパイアハンターとなります。
そしてラルヴァの血は、“穢れ”を持つ者にとっては毒となります。
そのため、ラルヴァは冒険者となって蛮族と戦ったり、ヴァンパイアを積極的に狩りに行くこととなるのです。

概略 / CG

通常の手段で子供を設けないノスフェラトゥが、人族と交わることでなしたヴァンパイアの幼体とも言うべき存在が、ラルヴァです。
生命を超越した、不老不死の存在であるノスフェラトゥは、普通の生物が行うような手段で子をなすことはありません。
一族に招き入れるだけの優れた資質や容貌をそなえた、選ばれた者にのみ“血の接吻”と呼ばれる儀式を行い、ノスフェラトゥへと変化(彼らは昇華と呼びます)させます。
逆に、男女の交わりによって子をなすことを、原始的で汚らわしい行為と蔑んでいます。
ですがノスフェラトゥの中にも、ごく稀に人族と交わり、子をなしてしまう者がいます。
そうして生まれてきた者をノスフェラトゥは虫けらラルヴァと呼び、蔑みました。
こうした、ノスフェラトゥにとってのタブーから生まれた存在ゆえ、ラルヴァは極めて稀少な存在です。
その姿は、一見すると母体となった人族の姿と変わりません。
しかし母体である種族の特徴や能力的傾向を受け継ぐことはなく、また肌が病的に青白い点や、暗闇の中では目が赤く光るといった特徴から、ラルヴァであることが露見することがあります。
ラルヴァは15歳程度で成人となり、ほとんど老いることなく生きます。
そして300歳ぐらいを節目に、ラルヴァは一度死を迎えます。
その体は屍蝋化し、腐敗することはありません。
この状態のまま1年が経過すると、一部はノスフェラトゥへと覚醒し、その価値観やメンタリティはノスフェラトゥそのものになります。
ですが、その確率は低く、大半のラルヴァはレブナントとなってしまいます。
ノスフェラトゥの生き血には、ラルヴァの覚醒を抑制する効果があり、これを摂取することで死蝋化せずに寿命を迎えることができると考えられています。
しかしその必要量は定かではなく、多いほどよいことしかわかっていません。
そのため、人として死にたいと望むラルヴァの多くは、ヴァンパイアハンターを生涯の稼業に選びます。
一方のノスフェラトゥも、ラルヴァのことを不浄の存在として忌み嫌い、その存在に気づけば、積極的に抹殺しようとすることでしょう。
そして親から受け継いだ資質として、“吸血への渇望”があります。
ラルヴァは生き血を吸わずとも生きていけますが、吸血への衝動だけは存在し、それが彼らを苦しめる原因ともなります。

歴史 / CG

ラルヴァの歴史は、そのままノスフェラトゥの歴史とも直結しています。
不死神メティシエを奉じ、不死を願うことでノスフェラトゥとなった者が現れたのは、神紀文明の末期と考えられています。
そして古代魔法文明時代には、かなりの勢力を誇ったという記録が残されています。
生命を超越したノスフェラトゥたちにとって、旧態然とした野生動物がごとき行為によって子をなすなど、野蛮で下品なことと考えられるようになりました。
不老不死であり、生命体として圧倒的な能力を獲得するに至ったノスフェラトゥにとって、子をなすことに大した意味はなくなっていたのです。
ですが生命体としての本能が残っていたのか、あるいは一時の気まぐれか、古代魔法文明時代に、人族と交わり、男の子をなしたノスフェラトゥがいました。
その結果、最初のラルヴァが生まれたと伝承には残されています。
その伝承によれば、世界最初のラルヴァは、両親によって愛情を込めて育てられました。
加えてあと2人、子供をなしたといいます。
しかしノスフェラトゥとしてのタブーを犯したことを知られた父親は、同族たちの手によって滅ぼされ、母親も殺されてしまいました。
母親によってどうにか逃がされた三兄弟は、復讐を誓ってヴァンパイアハンターとなり、数多のノスフェラトゥを狩ったと伝承は語ります。
ですが激しい戦いの中でひとりは殺され、さらにひとりは死蝋化した後にノスフェラトゥ化し、最後のひとりの手によって葬られたところで伝承は幕を閉じています。
ですが、ノスフェラトゥとラルヴァの戦いに関する伝承は多く残されており、それを手がかりにヴァンパイアハンターとなったラルヴァたちは戦い続けています。
そしてこの戦いの歴史は、すべてのノスフェラトゥが滅ぼされるまで、終わることはないのかもしれません。

種族としての特性 / CG

敏捷度と筋力と知力に優れるラルヴァは、あらゆる技能での活躍が期待できます。
その万能性から、魔法戦士や神官戦士は最適な選択と言えるでしょう。
ただし、生命力はかなり低く、それは結果としてHPの低さに直結しています。
そのため、戦士としては打たれ弱い印象を持つことになるでしょう。
さらに、ラルヴァの種族特徴[忌むべき血]の存在が、打たれ弱さに拍車をかけます。
自分のHPを犠牲に、敵により多くのダメージを与えるこの能力によって、ラルヴァのHPは次々と削られていくことになります。
結果として、同じく種族特徴である「吸血の祝福」を用い、敵から血(HP)を吸うことにもなりかねません。
また、太陽の下では命中力と回避力に著しいペナルティを被ることから、それを補うべく魔法使い系の技能を身につけておくのは重要です。
日中は魔法使いとして、日の当たらない場所では魔法戦士として、立ち位置を巧みに変えながら立ち回れば、自分の呪われた出自のせいで活躍できない、ということは減らせるはずです。

文化 / CG

ラルヴァもまた、文化を形成するほど数が存在しない種族のひとつです。
ですが、彼らには文化に等しいものがひとつあります。
それは、ノスフェラトゥと戦うための手段や知識です。
数そのものが希少なため、生涯にラルヴァが他のラルヴァと出会うことそのものが稀ですが、年経た者は、まだ若いラルヴァを探し出し、自らの経験を伝えようとします。
多くのラルヴァは、ノスフェラトゥに対して、本能的に強い嫌悪や敵炉心を抱いています。
それは同族嫌悪のようなものなのかもしれません。
そしてラルヴァがどれほど執念を燃やしても、ノスフェラトゥを倒すのは容易なことではありません。
彼らの比較的長い寿命をすべて投じても、ノスフェラトゥを根絶やしにするのはまず不可能な話です。
そのため、ラルヴァの多くは己の学んだ技術や知識を、若い後継者へ伝えようとします。
あるいは、自分の寿命を感じ取り、自らを葬る者を育てようとするのかもしれません。
いずれにせよ、無事に後継者を見つけたラルヴァのヴァンパイアハンターは、まず若者を徹底的に鍛え、武器や魔法の扱いを叩き込みます。
同時に人族の中で生きる術も教え、長い人生を戦い抜くための手段を身につけさせます。
当然、並行してノスフェラトゥーヴァンパイアたちの特性や習性、警戒すべき能力や弱点などを、しっかりと教え込みます。
そして手始めにブラッドリングやブラッドサッカー、やがてレッサーヴァンパイアなどを狩るべく旅に出るのです。
ノスフェラトゥとの戦いは過酷であり、師弟もろとも全滅することも珍しくはありません。
なので、ノスフェラトゥとの戦いのノウハウは、途絶えがちです。
ですがヴァンパイアハンターたちは書物などの形でも情報を残し、少しでも後世の者たちに役立つよう努力を続けています。
魔動機文明時代に蛮族がほとんど駆逐されてしまった余波で、現在ではそのノウハウもかなり失われてしまいました。
ですが、新たなヴァンパイアハンターたちの手によって古の書物が発見されたり、新たなハンターの育成が行われています。
〈大破局〉後の混乱で、皮肉にもヴァンパイアハンターの狩りの文化は、再び脚光を浴び始めているのです。

社会での存在 / CG

ラルヴァは蛮族でありながら、人族から生まれる珍しい存在です。
どのような経緯で生まれるかによっても異なりますが、多くの場合は母親が人族であり、その影響を受けて育つため、価値観や常識などの面で、非常に人族に近い感覚を身につけている場合がほとんどです。
特に人族の集落に暮らす女性のもとへノスフェラトゥが訪れ、子をなした場合、生まれも育ちも人族社会の中、ということになります。ノスフェラトゥが母親となることは可能ですが、下賤な存在と蔑む人族と、ノスフェラトゥの女性が交わることはほとんどありません。
このように、かなりの確率で、ラルヴァは人族社会(主に人間が多い)で生まれ育ちます。
しかしひとたびその正体が露見すれば、多くの場合大変なことになります。
まず、蛮族だというだけで恐怖や憎悪の対象となり、命を狙われるか、追放されることになるでしょう。
ヴァンパイアハンターとノスフェラトゥの関係を知っている者ならば、ラルヴァを狙ってノスフェラトゥが集落を襲う可能性を考え、積極的に排斥しようとするかもしれません。
また、悲しいことに、ラルヴァにはどうしようもなく吸血への渇望があり、それは愛情や情欲の高まりと共に抑えが効かなくなることがあります。
万が一吸血したことが原因で正体が露見すれば、ヴァンパイアの仲間として、狙われることにもなりかねません。
結果としてラルヴァたちはあまり表だった場所では活動しようとはしません。
日光の下では動きが鈍ることも、夜になれば目が赤く光ることも、隠し通すのは難しい特徴です。
しかし冒険者にとって、ヴァンパイアハンターを目指すラルヴァの存在は、非常に頼もしく感じられることでしょう。
そのため、秘密を共有し、家族や兄弟のように接する冒険者もいます。

コラム:ラルヴァの血 / CG

ノスフェラトゥの幼体として、いずれヴァンパイア化してしまうかもしれない宿命と抗い続けるラルヴァ。
その「忌むべき血」は、“穢れ”を持つものにとって、毒にも等しい効果があるのは有名です。
そのため、ラルヴァは戦いを始める際、まるでなにかの儀式のように、自らの得物で指先や手のひらを切り、刃に鮮血を塗りつけます。
不死者ノスフェラトゥの血は、驚くほどの生命力を持ち、流れ出てもしばらくはラルヴァの意識に反応し、敵に対し襲いかかろうとします。
そしてラルヴァ自身も、自ら刻んだ傷口から溢れる鮮血を、さらに刃へとまとわせて戦います。
忌まわしいノスフェラトゥの血脈が、ハンターとしての武器になる皮肉に、ラルヴァたちは小さな笑みを浮かべます。
そして、「これこそ父がくれた最高の贈り物だ」とつぶやくのです。
そんな彼らも、長い戦いの日々を送る中、恋に落ち、子供を設けることもあります。
そして不思議なことに、人族とラルヴァの間に生まれた子供が、ラルヴァとなる事象はいまだ一例も報告されていません(蛮族との間に設けた子供の情報は、いまだ皆無です)。
必ずラルヴァではない種族か、ラルヴァの母の種族の子供が生まれてくるのです。
父親となったラルヴァは、人族として産まれた我が子の存在に喜び、涙するとも言われています。
当然のように、その子の体に流れる血はごく普通の血であり、魂には“穢れ”もないのです。
家族を得ることで、ヴァンパイアハンターを引退するラルヴァもいます。
ですが、ほとんどの者が、さらに過酷な狩りへと挑んでいきます。
まっとうな人として、正しく死を迎えるべく我が子と同じ、人として生きるべく、ノスフェラトゥを狩り、その血を飲み干すために。
そして無事に生還するハンターは、本当に稀です。
不死者の幼体ゆえ、長命だというのに、彼らにとっての幸せな時間は、本当に稀少なものです。

コラム:開祖たちはどこへ消えた? / BT

ラクシア最大級の謎のひとつが、ノスフェラトゥの開祖たちです。
不死を得たはずの彼らが、今では、ひとりとして、その姿を見られないのです。
すでに神への階段を上った、世界に干渉する意欲を失って引きこもった、氏族の争いで、あるいは、「子」の誰かに謀られ、滅ぼされた。
など、さまざまな憶測がありますが、真実は知られていません。
現在のノスフェラトゥの各氏族は、それぞれが抱える一族の長の中から、ひとりが大長として選任されることでまとめられています。
このことは、一族間のみならず、一族の内部でも、権力闘争を発生させる火種になっています。
単純に戦い合っても、他の氏族やドレイクらを利するだけであり、また、互いの不死性にも阻まれるため、彼らの闘争は、権謀術数を凝らした、情報戦や心理戦を主としています。

コラム:疑惑の神 / BT

あのときより、自らの内に湧き上がり、悩ませ続けてきた積年の疑問に、ようやく解答を見つけることができた。
世界の真実にまた一歩近づいたことを嬉しく思う。
資料の紹介、推理と証明の詳細は後の機会に譲り、結論のみ述べる。

ル=ロウドとキルヒアの聖印は、“黒き吸血鬼”に罰を与え得ない。

――“カインガラの宝石”ジュエリィ・ルーティア記

コラム:ブラッドサッカーの優劣 / BT

「ノスフェラトゥに血を吸われて生まれるブラッドサッカーに、優等種と劣等種があることは、すでに知られています。
この差が発生する理由について、『血の吸い方の上手下手』などという主張もございますが、私は、このたび、吸血者が明らかとなっている、これらの種の発生事例を広く調査し、相関を明らかにしたことを報告します」

吸血者リングサッカーマッド
レッサー
ヴァンパイア

(△=少ない、◯=そこそこ、◎=多い)

「これより、レッサーヴァンパイアはヴァンパイアに比較して、血の吸い方が下手で乱暴という結論が導けます」
「ちょっと待て!その結論はおかしい!」

コラム:ヴァンパイアの目に映るもの / BT

ヴァンパイアの目に映るもの。
それは、おおむね「ゴミ」と「獲物」である。
大多数を占める「ゴミ」に関心はない。
なるべく触らず、どうしても邪魔とあれば払うだけだ。
ごく一部が「獲物」である。
手に取るに値する例外。
ヴァンパイアは、それをさまざまに味わう。

男は、女にぞっこんだと思われた。
花と宝石を手に通い、女を飾り、愛であげた。
甘い言葉を囁き、優しく髪を撫で、そして、最後に、遠慮がちに特別な愛の行為に至った。
男の正体が知れたとき、人間の軍隊は女を人質にとった。
人間の脅迫を男は笑い飛ばし、自ら人質を手にかけた。
おののき、問いただす指揮官に、ヴァンパイアは答えた。
「人間だって、きれいな器に美しく盛られた料理のほうをおいしく感じるのだろう?」

コラム:ノスフェラトゥの血統 / BT

蛮族の中にあり、不死神メティシエを奉じ、不死を渇望し続けたのが、今あるノスフェラトゥたちの先祖です。
彼らは、人族の血を吸うことで永遠の命を長らえる術を見つけ出しました。
真っ赤に輝く双眸と鋭く尖った凶悪な犬歯を持つ、ヴァンパイアの登場です。
彼らは、クリューやフラウといった、今あるノスフェラトゥ氏族の開祖となり、氏族ごとにその特徴を受け継がれています。
クリューの氏族は露となって死から逃れ、フラウ氏族のものは、香気を漂わせ、また、死しても灰から復活します。
ヴァンパイアは特に気に入ったものに、“血の接吻”という儀式を行います。
“血の接吻”は1夜に1回、7夜に渡って行われ、7回目の“血の接吻”が終わると、対象はレッサーヴァンパイアとなります。
レッサーヴァンパイアは、親であるヴァンパイアの命令には逆らえません。
レッサーヴァンパイアの中でも、さらに認められたものは、“血族の契り”を与えられ、ヴァンパイアへと引き上げられます。
開祖たちが氏族を発展させたのも、この“血族の契り”によるところであり、その過程で、いくつかの分家(一族)が発生しました。
クリュー氏族には、ノワール、ルージュ、グリューンといったものがあり、フラウ氏族にはローズやリリィ、デイジーなどが存在します。
今では、“血族の契り”が与えられるのは、非常に稀なことです。
親ヴァンパイア個人の意向だけではなく、一族や氏族の動向にも影響されます。
当然ながら、新たなヴァンパイアは、契りを結んだ一族・氏族に組みこまれます。
ノスフェラトゥの社会において、「血を受け継ぐ」とは、こうした“血の接吻”、“血族の契り”という儀式を経ることを意味します。
彼らは、通常の生殖行為によって子をなすことには、何の価値も見いだしていません。
ヴァンパイアたちの高い能力は、彼らの血統に裏打ちされたものであり、それが極めて強いプライドと選民思想に繋がっています。
ノスフェラトゥの“穢れ”では、アンデッド化する限界の直前にまで達しています。
【リザレクション】による蘇生をはじめ、“穢れ”をわずかでも受けることがあれば、即座にアンデッド化してしまいます。
しかし、ヴァンパイアを滅するのは大変な労力です。
高位のヴァンパイアは、いずれも特殊な復活の手段を持っていますし、そうでなくとも、彼らは、メティシエとの強い結びつきにより、【アンホーリー・ソイル】による復活であるならば、“穢れ”が上昇することがありません。

解説 / BB

かつて、神々の恩寵を受け、不老不死を獲得した者たちがいました。
彼らは、いずことも知れない暗闇の底から世界を操ろうとする者であり、数多のアンデッドすらも従える者です。
人々は、畏怖の念を込め、彼らを「不死の支配者」と呼びます。
ヴァンパイア、リャナンシーというのが、彼らの名でした。

彼らの系譜は、神紀文明時代、不死神メティシエや妖夢の女神カオルルウプテらの恩寵を受けた者たちが、原初のヴァンパイアとなったことに始まります。
その後、神々の戦いにおいて、彼らは戦神ダルクレム陣営の一翼を担い、数千数万にも及ぶ屍を築いたとされています。
しかし、神紀文明の終焉とともにいずこかへ姿を消してしまいました。
歴史上では、魔法文明時代にヴァンパイアの魔法王が出現したり、〈大破局〉において蛮族軍に一部のヴァンパイアたちが加わっていたことがわかっていますが、現在では、わずかながらディルフラムの“紫闇の魔将”カーツ・ディルフラム、イレスデアルの“静かなる不死者"ヴォルクライアらの所在が知られているに過ぎません。
人族の間でも、蛮族の間でも、彼ら「不死の支配者」たちは、だれにも知られていない樹海や山岳の奥地、あるいは深い地の底、魔法で生み出された異空間などに造られた豪奢な城や宮殿に住んでおり、自らが生み出したリャナンシーたちを人族や蛮族の社会に潜入させていると信じられています。

都市や集落に潜伏したリャナンシーたちは、さまざまな情報を集めるとともに、心の弱い者たちを誘惑してメティシエやカオルルウプテを始めとする彼らの主人が信仰する神々の信者を増やし、数々の陰謀を実行するための手駒にしていると言われています。
そして、こうした彼らの陰謀が人族と蛮族の歴史を動かしてきたと信じる者も少なくありません。

しかし、彼らの暗躍が明るみに出たという記録は、ほとんど残されていません。
わずかな例でも、はぐれ者のヴァンパイアがその眷属とともに騒動(と言っても一国を滅ぼすほどの大事件であったりしますが)を引き起こしたという程度で、原初のヴァンパイアたちが関わったと思われるほどの事件は認められません。
このため、歴史の裏では、常に彼らが暗躍しているという主張に疑問を投げかける者もいます。
しかし、大多数の者は、彼らは巧みに自分の存在を隠しており、記録に残されるような下手は打たないのだと主張しています。
そればかりか、公の組織の中にも彼らの手駒となる者が紛れ込んでいるため、なにか不手際があったとしても隠蔽されてしまうのだと信じている者も少なくないのです。
ただし、彼らの陰謀を信じていない者たちでさえ、隣人が彼らの手先かもしれないという漠然とした不安感から逃れることはできません。
そして、このような潜在的な不安を人々の間に蔓延らせたことこそが、彼らがもっとも成功させた陰謀であると言えるでしょう。

ヴァンパイア

俗に「吸血鬼」と呼ばれている、神々の恩寵によって不老不死を獲得した蛮族がヴァンパイアです。
そのほとんどは、不死神メティシエを信仰し、次いで妖夢の女神カオルルウプテを崇める者が多いとされています。
もとは人族であったものが、上位のヴァンパイアによって一族に迎え入れられ、ヴァンパイアとなるため、容姿はもともとの種族のそれを引き継ぎます。
総じて、美しい姿をしており、高貴な雰囲気を漂わせています。
言葉遣いや仕草も優雅で、身だしなみにも気を遣い、おしゃれです。
真っ赤に輝く双眸と、鋭く尖った犬歯を持つのが彼らの特徴です。
彼らに定められた寿命はありません。
人族の血を吸う限り、永遠に生きながらえることができます。
ただし、実際のところ、生きながらえるためだけなら、それほど頻繁に血を吸う必要はありません。
しかし、必要に関係なく、血への渇望が生じるため、夜な夜な人族を誘惑したり襲ったりして血を求めます。
この血を吸いたいという衝動は、より下位のヴァンパイアほど強く、最下級のレッサーヴァンパイアでは、ほとんど抑制することができません。
一方、上位のヴァンパイアは、ほぼ完璧に自らの衝動をコントロールすることができます。
太陽光に弱い彼らは、日中は住処から出ることはなく、ほとんどの場合、夜の行動に備えて眠っています。
このため、彼らはリャナンシー、狂信的なメティシエやカオルルウプテの信者、アンデッドなどに寝所を守らせ、無防備なところを攻撃されないよう配慮しています。
ヴァンパイアは、他者に対する情愛が極めて希薄で、基本的に自分だけしか愛していません。
しかし、人族であった頃の感情が残っているため、ごく身近な一族や眷属に家族のような情愛を注ぐこともあります。
また、彼らは気まぐれに人族を愛人にしたり、子供を拾って身近に置いたりすることもあります。
そして、特に気に入った者には、“血の接吻”という儀式を七夜に亘って行い、仲間に引き入れます。
ヴァンパイアの社会では、「血を受け継ぐ」ことは、この“血の接吻”によって仲間に迎え入れられることを示します。
そして、彼らの数は、ほとんどこの方法でしか増えません。
ヴァンパイアは、通常の生殖行為を行わないからです。
ただし、彼らに通常の生殖行為が不可能なわけではなく、事実、これによって生まれるラルヴァと呼ばれる半人半吸血鬼も存在します。
しかし、彼らは通常の生殖行為を汚らわしい行為として忌避しており、禁忌とされています。
このため、ラルヴァとその親となったヴァンパイアは、禁忌を犯した者として追放されてしまいます。

ヴァンパイアには、レッサーヴァンパイア、ヴァンパイア、ノスフェラトゥという階級があります。
最下級であるレッサーヴァンパイアは、“血の接吻”によってヴァンパイア社会に迎え入れられたばかりの者たちです。
自らに“血の接吻”を行ったヴァンパイアとは「親」と「子」のような関係になりますが、その地位は低く、従者や召使い程度の位置づけとなり、親であるヴァンパイアに逆らうことはできません。
さらに、レッサーヴァンパイアの中でも、容姿や能力が特に優れており、親であるヴァンパイアのお眼鏡に適った者には、“血の契約”が与えられ、ヴァンパイアに引き上げられます。
こうして、ヴァンパイアとなった者は、親であるヴァンパイアの氏族や一族が持つ特質や能力を獲得し、騎士や下級貴族程度の地位を得ます。
親であるヴァンパイアに対しても、抗える程度の自由意思を持ちます。
そして、ヴァンパイアの中でも、ごく限られた極めて強大な力を持つ者がノスフェラトゥです。
彼らノスフェラトゥは、魔法文明時代の初期までにヴァンパイアとなった者たちを中心としており、その地位は大貴族や王族に相当します。
すべてのヴァンパイアは、ノスフェラトゥに対して、本能的な畏怖を抱くため、その命令に背くには尋常ではない精神力を必要とします。

ノスフェラトゥのほとんどは、原初のヴァンパイアと、彼らから直接“血の接吻”を受けた最初の世代のヴァンパイアたちです。
中でも、原初のヴァンパイアたちは、開祖、始祖、あるいは総称して長老種などと呼ばれ、その力は小神を遙かに凌駕し、大神にも迫るほどのものだったと神話や伝承には語られています。
彼ら原初のヴァンパイアたちは、選民意識が強く、新たなヴァンパイアをつくることには消極的で、護衛役としてエンプーサという美しい女性の姿をしたアンデッドを従えていただけでした。
しかし、神々の戦いが始まると戦力としてのヴァンパイアが必要となったため、一時的にその数を増やしました。
また、リャナンシーが生み出されたのも、この頃のことです。
こうして数を増やすに従い、血統的に原初のヴァンパイアたちに近く、強大な力を持つ者たちが「不死者」――ノスフェラトゥを名乗り始め、貴族階級を形成しました。
この過程で、クリュー、フラウ、アンピュルシオンなどの氏族が生まれ、さらに一族が分派していったのです。神紀文明時代の末期では、彼らは蛮族の中でも1、2を争う勢力となっていました。
しかし、神々が眠りに就くと、彼らは戦いに興味を失います。
というより、彼らはもともとまじめに戦う気はなかったのです。
永遠に老いることも死ぬこともない上に、神にも匹敵する強大な力を持っていた彼らの基本的な考え方は、「ほしいものは、ほしい時に手に入れればよい」というもので、大軍を動かして戦ってまで支配するのはめんどうだと考えていたのです。
言い換えるなら、「わざわざ支配しなくても、自分たちはいつでも好きなものを手に入れられる」と考えていたとも言えます。
そんな彼らが、消極的ながらも戦いに参加していたのは、メティシエやカオルルウプテら彼らが信仰していた神々に従っていたに過ぎなかったのです。
ほどなくして、ノスフェラトゥたちは、人族に無謀な攻撃を繰り返しました。
これは、不本意に増やしていたヴァンパイアを間引いて身軽になり、姿を消すためでした。
同時に、一時的に人族の勢力を削いで、その後の追跡を不可能にするという意味合いもあったようです。
こうして姿を消したノスフェラトゥは、氏族や一族などのコミュニティごとにわかれて、ラクシアの各地へと散り散りになっていきました。
このため、いまでは彼らの中にすら、他のノスフェラトゥがどこにいるのかを熟知している者はいません。

いまでも、ノスフェラトゥの多くは、どこにあるかはだれにもわからない根城に篭もったまま、表の世界に出てくることはありません。
しかし、眷属であるリャナンシーや下位のヴァンパイアを放って、人族や蛮族の動向を観察していることは確実です。
そして、必要とあらば、何らかの策謀を巡らすこともあります。
ただし、それは世界を支配するためではありません。
彼らの興味は、人によっては停滞したと表現するかもしれない、彼らの安穏な暮らしを維持することだけです。
彼らは、自分たちに対抗できる者がほとんどいないことを知っていますが、根城付近でウロチョロされたり、望まない戦いを挑まれたりするのは気持ちのいいことではありません。
また、万が一にも、自分に対抗できるほどの力を身につける者が出現しないとも限らないことも知っています。
そのため、自分を探そうとしている者、根城に近づこうとしている者、神にも匹敵する高みに昇ろうとしている者などについて、常に注目し、情報を収集しています。
そして、必要に応じて、妨害や排除などの処置を取ります。
また、人族と蛮族が協力して自分を脅かすことがないよう、争いを助長しつつ、どちらかに天秤が傾きすぎないよう工作しています。
このため、人族になりすまして工作に従事したリャナンシーが、人族の英雄として称えられることすらあります。
もちろん、その正体は明らかにされませんし、知るべきでないことを知った者は抹殺されることになります。
こうして、彼らは決して夜明けが訪れることのない世界を作り出し、その暗闇の中で安穏な眠りを享受しています。
そして、その眠りを乱そうとする者には、それが故意であっても、偶然であっても関係なく、制裁が下されます。
この目的のために、同胞や眷属を抹殺しようとすることもあり得ます。

リャナンシー

リャナンシーは、ノスフェラトゥによって生み出された蛮族で、青白い肌と華奢な身体をした人族の美しい女の姿をしています。
ただし、極めて希少ながら男性のリャナンシーも存在します。
不老不死であるノスフェラトゥに仕えるべく生み出されたため、彼女たちにも寿命はありません。
彼女たちは、生みの親であるノスフェラトゥを主人として仕え、召使いとして身の回りの雑事をこなすとともに、その護衛役をも担っています。
また、〈守りの剣〉の影響を受けないという特殊能力を活かして人族社会に紛れ込み、情報を収集したり、主人が巡らす陰謀を実行したりしています。
さらに、主人の好みを熟知しており、主人好みの人族を見つけると誘拐して根城に連れ帰り、主人に献上することもあります。
この目的を達成するため、リャナンシーは人族や蛮族を「恋人」として選び、噛み付くことで穢れた血漿を体内に流し込んで魅了して、本当の恋人のように振る舞いながら、その目的のために利用します。
また、リャナンシーの中でも、特殊な体術を身につけ、「暗殺者」の称号を許されたリャナンシーアサシンは、相手の記憶や技能を奪い取った上、その姿形をも模倣する能力を持っています。
彼女たちは、この能力を駆使して、都市や組織の有力者、重要人物、高名な冒険者などと密かに入れ替わることもあります。
このように、ノスフェラトゥから遠く離れた場所で活動することの多いリャナンシーには、自らの判断で行動できるだけの知能とともに、その権限も与えられています。
ただし、主人に絶対服状であることは変わりなく、裏切ることは決してありません。
一方で、ごく稀に、奪い取った記憶に引きずられて、特定の人族や蛮族に好意を抱き、主人の不利益にならない程度に、そうした人物を保護したり助けたりすることもあります。

リャナンシーを生み出す秘法を知るノスフェラトゥは限られており、そのほとんどは長命種です。
このため、リャナンシーと敵対することは、強大な力を持つ長命種と敵対することを意味します。
その秘法は、“闇燭の祭礼”と呼ばれる儀式として行われます。
ノスフェラトゥは、リャナンシーにしたい者をレッサーヴァンパイアの中から選びます。相手が人族であった場合には、まず“血の接吻によってレッサーヴァンパイアにしてから“闇燭の祭礼”を執り行います。
リャナンシーに選ばれるのは、ほとんどが女性です。
しかし、極めて稀に、男性が選ばれる場合もあります。
ただし、男性の場合は、魂の資質がリャナンシーに適合する者が少なく、もし適合しなければ儀式の途中で滅んでしまいます。
多くの場合、リャナンシーにしたい相手はお気に入りであることから、このような危険を冒してまで男性をリャナンシーにしようとするノスフェラトゥは稀です。
そんな危険を冒さなくても、“血の契約”によってヴァンパイアに引き上げてやればよいだけなのですから。
“闇燭の祭礼”は、人族でいう婚姻の儀式に近いもので、この中でノスフェラトゥとリャナンシーは指輪を交換します。
この時、リャナンシーに与えられる指輪は“主燭の指環”と呼ばれますが、一部の人族の間では〈血色の指輪〉あるいは〈紅血色の指輪〉として知られています。
こうして指輪を与えられたリャナンシーの地位は、彼女をリャナンシーとしたノスフェラトゥの地位に準じます。
このため、ほとんどのリャナンシーは、下手なヴァンパイアよりも上位を占めます。
一方、リャナンシーは“闇燭の祭礼”で“燭嫁の指環”をノスフェラトゥに捧げます。
この指輪は、リャナンシーの命と同等であり、ノスフェラトゥが望むなら、いつでもこの指輪を通してリャナンシーを支配することができます。
さらに、“燭嫁の指環”が破壊されると、リャナンシーは塵となって滅びます。
ただし、あまり知られていない伝承では、とある儀式によって“主燭の指環”と“燭嫁の指環”を破壊した場合のみ、リャナンシーはもとの人族に戻ると言われています。
しかし、これを試した例は、記録されていません。

製作者:杵月@キズナ