"グラウクス"それは黎明や夜明けを意味する古き言葉でもあり､コルガナ地方で代々奈落の討滅を目的に掲げ続けていた者達が実力から得た貴族位でもありました｡
奈落の力を信仰する奈落教に対しては特に警戒を強くしており､何度も争いその因縁は途方に暮れるほど長いものでもありました｡
ですが､入り込まれた信者の手により奈落の魔域が作られ､飲み込まれ｡その魔域は本部から救援に来た冒険者の手によって破壊されたようですが､中に居た者達は既に事切れ､出払っていたレギンクルムだけが生き残りました｡

ゆえに彼女は奈落と､それを崇拝する奈落教に対する怒りの炎だけは失う事はありません｡
取り戻すためではなく､ただ自分にできる唯一の弔いがそれらを滅ぼす事だと知っているからです｡

彼女が人前で手袋を外すことはありません｡
何故ならそこには彼女が隠したい傷痕が､残っているのだから｡
……激情に駆られ､再び手にした大切なモノを失う切欠ともなった傷痕が｡
"--の印"

面倒見の良い姉御肌であり､上役からは可愛がられる妹気質でもあった｡
生まれついての才能とそれを無にしない努力を欠かさずに続け､騎士団内の1つの部隊の隊長を務めるほどであった｡

力が要ると旅をした｡
色々な地方を巡り､時には騎士団と､時には冒険者と協力しながら問題を解決する｡そんな放浪者のような生活｡
彼女が1人で生きていく術を学んだのは､この旅である｡

元々グラウクス家が趣味と実益を兼ねて行っていた酒造｡
その知識と経験を生かして酒の製造､販売を行っていた｡
力を求めて旅をした結果何を得たのか｡
そして何を経験し､1つ所に根を張る事となったのかは不明である｡
しかしそんな彼女の中に変化があったのか､懇意にしていた青い鳥と不協和音のギルドメンバーとして名を登録し､冒険者となった｡