自分を責める祖母の声と自分をかばう父の背中、自分の意志に関わらず吹き上がる黒炎がいつもの私に見える景色で。
鍛冶場の窯の中、森羅導師で神官だった父が出してくれる花の幻と、体力が尽きて黒炎が収まった自分に父が出してくれた薬草粥が慰めだった彼女に声をかけたのは、天から聞こえる厳かな声だった。
『娘よ、儂の声が聞こえるのか』
暖かくて、明るくて、強くて、優しくて、何もかも見透かされてる気がしてずっと見ていたくなるような。何もかもを超えた、聞いているだけで暖かく魅入られるような、今になって思えば、炎のような声。
未熟で納得がいっていなくて、私を取り巻くすべてが何もかも辛かった私は、その声に濁流のように焼け焦げた心の内をぶちまけた。
そうして吐き出せるだけ吐き出して、泣いて、わめいて、疲れ切って横になった私に、声は言った。
『炎は、何かを傷つけ焦がすだけのものではない』
『娘よ、お前を焼いているのはお前の心だ。炎に焼かれる苦痛の中にあってさえ、お前の母、我が信徒はお前のことを一心に案じていたというのに』
少しだけ、黒炎が弱まった。
『思考せよ、お前が何を為すべきか。母に幸福を願われ、父が生まれて初めて味わう灼熱に耐えて救い上げたその身を、その焔をどう扱うべきかを』
暖かい、白い炎が、黒炎を抑え込んでいくような気がした。

たとえ、自分を自分で許せなくとも。
少しだけ、ほんの少しだけ前に進もうと思えたんだ。